【市財政】市の「貯金」、どう活かす?―金利のある時代の基金管理と運用で、将来負担の軽減へ。

令和8年度9月議会では、令和7年度の上尾市決算を審査しました。
今後少しずつ決算審査で小池が注視したポイントについて、複数回に分けて解説していこうと思います。
今回は、以下小池が決算審査で質疑した主な内容の内、#5に関連する「基金運用により将来負担軽減」を解説します。

学校などの公共施設の更新や、上尾伊奈の新たな広域ごみ処理施設の整備。これからの上尾市には、多額の財源を必要とする事業が控えています。
物価や金利が変化するなか、将来の市民負担を少しでも軽くするために、ますます重要になるのが、市の「貯金」にあたる基金の管理と運用です。
令和7年度決算特別委員会では、9月7日の歳入審査と9月11日の基金・出納室審査で、基金の運用状況と、以前の一般質問でも提言した債券運用の検討状況を確認しました。
■ 施設更新には、物価と金利の両方が影響する
公共施設の整備・更新には、国や県の補助金、市債という市の借入れ、市税などの一般財源、そして積み立ててきた基金を活用します。
市債には、長く使う施設の費用を将来の利用者にも分担してもらう役割があります。一方、金利が上がれば、新たな借入れや借換えの条件によっては、利払いの負担が増えます。
さらに、建設資材や人件費の上昇によって、同じ施設を整備するにも、以前より多くのお金が必要になります。
必要な財源を計画的に積み立て、使う時まで適切に運用すること。基金の管理と運用は、こうした物価上昇や将来負担に備えるための重要な取り組みです。
■ 上尾市の基金は14種類、年度末残高は約150.2億円
基金には、年度間の財源調整を行う「財政調整基金」、公共施設の更新などに備える「公共施設整備基金」、ごみ処理施設の整備に備える「一般廃棄物処理施設建設等基金」など、目的に応じた種類があります。
令和7年度末の全14基金の残高は、合計で約150.2億円。前年度末の約137.1億円から、約13.1億円増加しました。
残高が大きいのは、財政調整基金の約68.3億円、公共施設整備基金の約39.9億円、一般廃棄物処理施設建設等基金の約21.6億円です。この3基金で、全体の約86.4%を占めています。
ただし、この約150.2億円は、すべて自由に使えるお金ではありません。介護保険や国民健康保険の基金も含まれ、それぞれに使い道があります。
大切なのは、残高だけでなく、「いつ、何のために、いくら使うのか」まで把握することです。近いうちに必要な資金と、数年先まで使わない資金では、適した運用方法も異なります。

■ 基金の預金利子は約5.6倍、約6,719万円増加
一般会計に計上された基金の預金利子を比較すると、令和6年度の1,461万4,978円から、令和7年度は8,180万2,095円へ増加しました。
1年間の増加額は6,718万7,117円。約5.6倍となっています。
公共施設整備基金の預金利子は約352万円から約2,356万円へ、一般廃棄物処理施設建設等基金では約161万円から約1,329万円へ増えました。
※この比較は一般会計の基金預金利子が対象です。株式配当金、特別会計の基金利子、諸収入の「市預金利子」は含みません。
決算審査では、市から、利子収入の増加には基金残高の増加と金利上昇が影響しているとの説明がありました。
利息は、預ける金額や期間によっても変わります。収入が約5.6倍になったことが、そのまま金利の約5.6倍への上昇を意味するわけではありません。
それでも、この増加額は、まとまった基金をどのような条件で運用するかが、市の財源確保に大きく関わることを示しています。

■ 定期預金が有利だったのは「満期1年未満」の条件
私は以前の一般質問でも、金利のある時代に対応し、債券による基金運用を検討すべきだと提言しています。
今回の決算審査で進捗を確認すると、市は債券も含めて金融機関などから条件を募り、比較した結果、大口定期預金の方が利率が高かったため、定期預金を選んでいると説明しました。
この点からは、現行のルールの範囲で、有利な条件を選ぶ取り組みが行われていたことが確認できます。
一方、さらに質疑を重ねると、令和7年度の比較は年度内運用であり、債券も満期1年未満という条件で行われていたことが分かりました。10年などの長期の債券運用については、検討していないとの答弁でした。
私が問題提起したのは、数年先まで使わない資金についても、短期の運用に限定することが適切なのかという点です。
現行の条件で商品を比較することに加え、基金の性質や使用時期に合わせて、その条件自体を検証する必要があると考えています。
■ 市の考え方は「金利上昇に対応するため、短期で預け替える」
市側にも、短期運用を続ける理由があります。
出納室長からは、金利が上昇するなかで長期運用を始めると、その後の金利より低い利率に資金を固定してしまう可能性があるため、現段階では1年程度で見直し、預け替える方が得策と考えているとの説明がありました。
この考え方には合理性があります。短期の定期預金なら、満期後に金利が上がっていれば、新しい条件で預け直せます。
ただし、将来の金利を確実に予測することはできません。短期運用にも長期運用にも、それぞれ利点と留意点があります。
だからこそ、金利の見通しだけでなく、基金を実際に使う時期を軸に、運用方法を組み合わせる視点が重要です。
■ 10億円を運用すると、どのくらい違うのか
運用条件による違いを知る参考として、令和7年5月発行の国債の入札結果を使い、10億円当たりの年換算収益を試算しました。
定期預金を年0.5%と仮定すると年500万円。これに対し、当時の募入平均利回りを使うと、2年国債は約691万円、5年国債は約980万円、10年国債は約1,274万円という計算になります。
これは上尾市の実際の契約条件を再現したものではなく、比較のための参考試算です。定期預金の年0.5%も仮定です。
また、債券の「利回り」は、利息に加え、購入価格と満期に戻る額面金額の差も含めた指標です。「運用額×利回り」で求めた年換算収益と、令和7年度中に実際に受け取れる利息は一致しません。
市の実績との差を正確に出すには、預入額・預入日・満期日・契約金利に加え、債券の購入価格や費用、基金の取崩し予定などを照合する必要があります。長期債は資金を長く固定するため、利回りだけで有利・不利を判断することもできません。
この試算から伝えたいのは、運用期間も含めて選択肢を広げ、比較する価値があるということです。

■ 満期を分散する「ラダー運用」という選択肢
長期運用を検討する際の選択肢の一つが、「ラダー運用」です。
ラダーとは「はしご」のことで、満期を迎える時期を段階的に分散させる方法です。
例えば、当面使わない資金を、1年後、2年後、3年後など、異なる時期に満期を迎える債券に分けます。戻った資金は、必要なら施設整備などに使い、当面使わなければ、その時点の金利で再び運用します。
こうすれば、すべての資金を一度に長期間固定せず、一部を順次、新しい金利条件で運用できます。
ただし、ラダー運用ですべてのリスクがなくなるわけではありません。急に資金が必要になり、満期前に債券を売却すれば、価格の下落によって損失が生じる場合があります。発行体の返済能力や、購入価格にも注意が必要です。
すぐに使うお金や不測の事態への備えは預金で確保し、満期まで使わない資金の範囲で、信用力の高い円建て債券を検討する。その前提となる資金計画が欠かせません。

■ 運用期間の考え方は、見直しを含めて整理へ
同日の関連質疑では、財政課長から、運用期間の「1年」という考え方について、見直しも含めて整理していく趣旨の答弁がありました。
また、基金の目標額や中期的な収支見通しなどを含む計画を策定する方針も示されました。最終日の委員会提言にも、「基金目標額の設定および積極的な基金運用」が盛り込まれています。
債券運用の導入や期間延長が決まったわけではありませんが、基金をいくら確保するか、その基金をどう運用するかの両方が検討対象になったことは重要です。
■ 小池の視点――将来の負担を軽くするために、今の運用を検証する
市民の大切なお金を預かる行政が、安全性を最優先にする姿勢は当然です。
同時に、物価が上がれば、同じ基金残高で賄える工事や設備は少なくなります。安全性と必要な資金の確保を前提に、より良い運用条件を検討することも、将来への備えです。
私は、基金ごとの使用時期と必要額を整理したうえで、中長期で運用できる部分については、債券や満期の分散を具体的に比較すべきだと考えています。運用実績や判断の根拠を、市民に分かりやすく示していくことも必要です。
基金運用だけで、施設更新費用の増加をすべて賄うことはできません。それでも、運用の改善で得られる収入は、将来必要となる借入れや一般財源の負担を軽くする一助になります。
将来の施設整備を支えるために、今の基金管理と運用を見直す。
今回の答弁と委員会提言が具体的な改善につながるよう、引き続き検討状況と成果を確認していきます。
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参考資料
・令和7年度決算審査意見書
・令和7年度決算特別委員会会議録(令和8年9月7日・9月11日、委員会提言)
※質疑・答弁は趣旨を要約しています。基金残高と基金預金利子では集計対象が異なり、残高は全14基金、預金利子の年度比較は一般会計が対象です。




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