【視察レポート】姫路市のウォーカブルなまちづくり~姫路城を軸に、「通過するまち」から「歩き、滞在したくなるまち」へ ~

会派「あげお志誠ネットワーク」の行政視察として、兵庫県姫路市を訪れ、「ウォーカブルなまちづくり」について調査しました。
姫路市といえば、世界文化遺産・国宝である姫路城を有する全国有数の観光都市です。
JR姫路駅を降りると、正面に姫路城を望むことができ、駅と城を結ぶ「大手前通り」が中心市街地の大きな都市軸となっています。
今回の視察で特に印象に残ったのは、姫路城という圧倒的な観光コンテンツを単に「観光客を呼び込むための資源」として捉えるのではなく、駅前空間、道路、商店街、公共空間などを一体的に再編し、まち全体の価値向上につなげようとしている点です。
車中心だった駅前を「人中心」の空間へ
かつての姫路駅前は、バス、タクシー、一般車などの交通機能が大きな面積を占める、いわば「車中心」の駅前空間でした。しかし、社会情勢や市民ニーズの変化を踏まえ、駅前広場のあり方を大きく転換。現在では、駅北側の駅前広場や大手前通りを中心に、歩行者が安全かつ快適に移動し、滞在できる空間づくりが進められています。
象徴的なのが、駅前広場から北側約160mを公共交通機関と歩行者中心の空間とした「トランジットモール」です。一般車両の通行を制限しながら、路線バスやタクシーなど必要な公共交通を確保することで、人が安心して歩ける都市空間を実現しています。
また、駅前広場と大手前通りの再整備により、歩行者が利用できる空間の割合は大幅に増加。市の説明では、駅前における歩行者・環境空間の割合は、整備前の約26%から約67%まで拡大したとのことでした。
単に道路や広場をきれいにするのではなく、都市空間そのものの「主役を車から人へ変える」という考え方が明確です。

民間ビルの一部も公共空間として活用する「立体都市計画」
もう一つ興味深かったのが、土地を平面的にだけ捉えず、「立体的」に利用している点です。
姫路駅周辺では、駅ビルや民間商業施設の一部について、立体都市計画制度を活用。
民間建築物が存在する敷地であっても、その1階部分などを歩行者が24時間通行できる公共空間として確保しています。
つまり、
「民間の土地だから公共空間にはできない」という発想ではなく、
「建物と公共空間を立体的に共存させる」という都市計画です。
土地利用に制約の多い駅前だからこそ、平面だけで考えるのではなく、上下方向も含めて公共空間を確保する発想は非常に参考になりました。特に、駅前再整備や再開発を考える際には、道路、広場、民間敷地、建築物を別々に考えるのではなく、一体的な都市空間としてデザインすることが重要だと感じます。

姫路城が見える大手前通り
JR姫路駅から姫路城へと延びる大手前通りは、姫路市を象徴するメインストリートです。
戦災復興の一環として整備され、幅員は約50m。時代の変化に合わせて自動車の車線数を減らしながら、歩道や緑地、滞留空間を拡大してきました。
現在の大手前通りには、イベント等で利用することを前提として、電源や水道などもあらかじめ整備されています。
道路を「人や車が移動するためだけの場所」ではなく、
「人が集まり、過ごし、活動する場所」として設計していることが分かります。
駅を出れば正面には姫路城。その景観そのものが大きな価値であり、道路空間のデザインも姫路城との調和を強く意識しています。

きれいな道路をつくっただけでは、にぎわいは生まれない
一方で、姫路市の説明で非常に印象的だった言葉があります。
大手前通りをきれいに再整備したものの、
「整備しただけでは、自然ににぎわいは生まれなかった」
という経験です。
ウッドデッキやベンチなどを整備しても、
「誰が使うのか」
「どう使うのか」
まで考えていなければ、人は滞在しません。
そこで姫路市では、ハード整備の次の段階として、沿道事業者や地域住民等と連携した「場所の使い方」の実験を始めました。

社会実験を繰り返し、日常的なにぎわいへ
大手前通りでは、マルシェ、飲食、ワークショップなどを実施する社会実験を展開。
椅子やテーブルを配置し、昼間だけでなく夜間にも人が滞在できる空間づくりを行いました。その結果、会話や飲食などの行動が増え、滞在時間も伸びたといいます。
参加事業者からは、売上が約1.5倍になったとの声もあったとのことです。
しかし、イベントの日だけ人が集まっても意味がありません。
そこで次の社会実験では、1年以上にわたりベンチや人工芝などを設置し、「日常的に使われる空間」へと発展させました。
このように、
社会実験 → 検証 → 改善 → 常設化
というプロセスを踏んでいることが、姫路市の大きな特徴だと感じました。
最初から完成形を行政が決めるのではなく、実際に使ってもらいながらまちの形をつくっていく考え方です。
全国初の「ほこみち」を活用
姫路市では、大手前通りにおいて、歩行者利便増進道路制度、いわゆる「ほこみち」を全国でも早い段階から活用しています。道路上に椅子やテーブル、飲食スペース等を設置し、民間事業者が継続的に道路空間を活用できる仕組みです。道路占用料についても大幅な減免を行い、民間事業者が参加しやすい環境を整備しています。
行政がイベントを開催し続けるのではなく、地域や民間事業者が主体となって公共空間を使う。この「行政主導から民間主体へ」という転換も重要なポイントです。
「姫路城を見て帰る」観光から、市内を回遊する観光へ
姫路市には、全国・世界から多くの観光客が訪れます。
しかし、市職員の説明によれば、
「姫路城を見て、そのまま神戸や広島へ移動してしまう」
という「通過型観光」が課題になっているとのことでした。
姫路市には、姫路城以外にも書写山圓教寺など多くの観光資源があります。
そこで、駅から姫路城までの大手前通りだけではなく、その周辺エリアにも人が回遊する仕掛けをつくっています。例えば、大手前通りから一本入った通りで社会実験を行った際には、3日間で約6,000人が訪れ、その多くが周辺の別の場所にも立ち寄ったという結果が出たとのことでした。
一つの場所に目的をつくることで、周辺への回遊が生まれる。観光振興と中心市街地活性化を別々に考えず、一体的に捉えている点が特徴です。
ウォーカブルは「歩道整備」だけではない
姫路市は令和3年に「ウォーカブル推進計画」を策定しています。
目指しているのは、単に「歩きやすい道路」をつくることではありません。歩くことによって、
市民の生活が豊かになる
滞在時間が増える
商業や観光の消費が生まれる
健康増進につながる
エリアの価値が向上する
「住みたい」「訪れたい」「住み続けたい」まちになる
という都市全体の価値向上につなげることです。
さらに、高齢者向け健康ポイント事業とウォーカブル施策を連携させ、イベント会場等にQRコードを設置することで、高齢者の外出や歩行を促す取り組みも行われていました。都市計画、観光、商業、健康福祉といった部署を横断して取り組んでいることも重要です。
上尾市に活かせるまちづくりの視点
今回の姫路市視察から、特に上尾市にとって参考になると感じたのは、
「駅前整備そのものを目的にしない」
という考え方です。
姫路市は、姫路城という強いコンテンツを持っています。しかし、姫路城があるから自然とまちが活性化するのではありません。駅前広場を人中心に再編し、大手前通りを歩きやすくし、民間敷地も立体的に活用し、さらに社会実験を繰り返しながら公共空間の使い方を育てています。
ハード整備とソフト施策の両輪があるからこそ、姫路城という資源の価値をまち全体へ波及させることができます。上尾駅周辺についても、今後の再開発や公共施設整備を考える際、「建物を新しくする」「道路をきれいにする」だけでは不十分です。駅を降りた人がどこへ歩くのか。どこで立ち止まるのか。どこで買い物をするのか。どのような景観をつくるのか。そして、公共空間を誰が、どのように使うのか。こうした「人の行動」から逆算したまちづくりが必要です。
特に、上尾駅東口については、駅前だけでなく、旧中山道や既存商店街、文化センター方面など、周辺エリアとの回遊性をどのようにつくっていくのかという視点が欠かせません。
姫路市の取り組みは、規模や観光資源こそ上尾市とは異なるものの、
「公共空間を、人が歩き、滞在し、活動する場所へ変えていく」
という考え方において、大いに参考となる視察となりました。
今後の上尾市における駅前整備や中心市街地活性化の議論にも、今回学んだ視点を活かしていきたいと思います。




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