【行政経営】高い収納率のその先へ!!上尾市の市税滞納は「なぜ」で分析を ~外国人市民への質疑から見えた、滞納者の属性分析を緻密化する必要性~

令和8年度9月議会では、令和7年度の上尾市決算を審査しました。
今後少しずつ決算審査で小池が注視したポイントについて、複数回に分けて解説していこうと思います。
今回は、以下小池が決算審査で質疑した主な内容の内、#3に関連する「外国人市民の市税収納率の質疑から分かったこと」を解説します。

令和7年度上尾市決算の審査では、個人市民税の滞納について、これまで以上に踏み込んだ分析の必要性を指摘しました。
上尾市は、市税全体で見れば高い収納率を維持しており、県内でもトップクラスの水準です。
だからこそ、今後さらに収納行政の精度を高めていくためには、収納率という全体の数字だけを見るのではなく、
「残されている滞納が、なぜ発生しているのか」
を細かく分析することが重要だと考えています。
普通徴収なのか、特別徴収なのか。
転職や離職など就労状況に変化があったのか。
納税制度を十分理解できているのか。
日本語の理解に課題があるのか。
それとも、経済的に納付することが困難なのか。
こうした 滞納者の属性や、滞納に至った理由を緻密に把握し、それぞれに応じた対策を講じること が、税負担の公平性を確保し、さらに収納率を高めていくために必要です。
今回、その必要性が特に浮き彫りになったのが、外国人市民の市税滞納をめぐる質疑でした。
予算審査の段階から見えていた課題
外国人市民の市税納付については、令和7年度当初予算の審査段階から確認を続けてきました。
市の答弁では、給与から市民税を天引きする「特別徴収」では比較的滞納が少ない一方、自ら納付する「普通徴収」において外国人市民の滞納が増えているとの認識が示されていました。
個人住民税には、大きく分けて2つの納付方法があります。
勤務先が毎月の給与から住民税を差し引き、市に納める方法が「特別徴収」です。
一方、市から送付される納付書などを使い、自分自身で納付する方法が「普通徴収」です。
普通徴収では、納付時期や納付方法を本人が管理する必要があります。
そのため、転職や離職、納付書の確認漏れ、制度への理解不足などが重なることで、滞納につながる可能性があります。
市全体では普通徴収に滞納が集中
決算審査では、個人市民税の収入未済額、つまり納期限を過ぎても納付されていない税額について確認しました。
上尾市全体の納付方法を見ると、
特別徴収:約8割
普通徴収:約2割
という構成です。
一方で、個人市民税の滞納については、普通徴収から発生している割合が非常に高いことが確認されました。
つまり、市税全体では高い収納率を維持している一方、その中をさらに細かく分析すると、
「普通徴収となっている人に対して、より重点的な対策を行う余地がある」
ということです。
そこで私は、外国人市民についても単純な滞納者数だけではなく、徴収方法や滞納理由まで分析できているのかを質しました。
外国人市民の滞納者数は289人
決算審査で市に詳細な確認を求めた結果、現年度の個人市民税に関する外国人滞納者数は、
289人
であることが示されました。
令和8年6月1日時点の上尾市の外国人人口は6,678人です。
単純に比較すると約4.3%に相当します。
ただし、6,678人には子どもや市民税が課税されていない人も含まれるため、この数字をそのまま「外国人市民の市民税滞納率」と見ることはできません。
重要なのは、289人という数字そのものだけではありません。
その289人が、なぜ滞納に至ったのかを市がどこまで分析できているのか。
ここが今回の質疑で最も重要なポイントです。
外国人市民は「普通徴収」の割合が高い傾向
さらに決算審査を通じ、市全体の傾向と比較すると、外国人市民では 普通徴収となっている割合が高い傾向があること も確認されました。
上尾市全体では普通徴収は約2割です。
給与から自動的に納付される特別徴収と違い、普通徴収では本人が納付書を確認し、自ら納付手続きを行う必要があります。
外国人市民の場合には、派遣労働や転職、雇用形態の変更などによって特別徴収から外れ、普通徴収へ切り替わるケースも考えられます。
さらに、日本の住民税は前年所得を基準として課税されるため、退職や転職をした後に納付書が届くこともあります。
こうした制度を知らなければ、本人に納税の意思があっても、結果的に滞納につながる可能性があります。
問題は「外国人だから」ではない
今回の質疑で明らかにしたかったのは、
「外国人市民の滞納が多いか、少ないか」
という単純な話ではありません。
本当に確認すべきなのは、
「どのような人が、どのような徴収方法で、なぜ滞納に至っているのか」
です。
外国人市民の市税滞納については、例えば次のような要因が考えられます。
仮設要因① 納税のシステムを十分理解できていない
日本の住民税の仕組みや、特別徴収と普通徴収の違い、退職後にも住民税の納付が必要になることなどを十分理解できていない可能性があります。
仮設要因② 日本語を十分理解できていない
納税通知書や催告書が届いても、その内容や納付方法を理解できず、結果として滞納につながっている可能性があります。
仮設要因③ 支払い能力がない
失業、転職、収入減少、生活費の上昇などによって、そもそも納付する経済的余力がないケースも考えられます。
しかし、現時点では、
「これらの要因が、それぞれどの程度存在するのか」
という分析が十分にできていません。
私は、ここに本質的な問題があると考えています。

必要なのは「属性分析」と「原因分析」
外国人市民という一つの括りだけでは、効果的な対策にはつながりません。
例えば、
・普通徴収か特別徴収か
・年代
・就労状況
・転職、退職の有無
・滞納期間
・滞納額
・納税通知が届いているか
・日本語による制度理解が可能か
・納税相談につながっているか
・出国による回収困難事例がどの程度あるか
など、可能な範囲で分析を細かくする必要があります。
その結果、
制度を知らない人には、制度を伝える。
日本語の理解が難しい人には、多言語や「やさしい日本語」で伝える。
納付を忘れている人には、SMSなどで早めに案内する。
経済的に納付が難しい人には、早期に納税相談につなげる。
というように、原因に応じた対策を行うことができます。
滞納者全員に同じ対応をするのではなく、原因に応じてアプローチを変えること。
これが重要です。

市も滞納理由の分析へ
質疑を重ねる中で、市からも今後の対応について前向きな答弁がありました。
外国人市民について普通徴収の割合が高い傾向があることを踏まえ、
言語の問題なのか、納税制度そのものを知らないのか、担税能力がないのかなど、滞納理由をできる限り分析し、それぞれに見合った対応策を考えていく
との考えが示されました。
また、外国人市民の割合が似ている近隣自治体などとの情報交換や比較も進めていく方針が示されています。
単純に「滞納者が何人いるのか」を把握するだけではなく、
「なぜ滞納しているのか」まで分析する方向へ踏み込んだことは、今回の決算審査における重要な前進だと考えています。
約4,000万円の収入未済額――分析は財源確保にもつながる
外国人市民に関する市税の収入未済額は、年間約4,000万円規模となっています。
もちろん、この約4,000万円すべてを回収できるという話ではありません。
経済的に納付が困難なケースや、出国などによって回収が難しくなるケースもあります。
一方で、滞納者の属性や理由をより細かく分析することで、
「納税制度を知らなかった」
「納付方法が分からなかった」
「普通徴収に切り替わったことを十分認識していなかった」
といった、適切な案内や早期の働きかけによって防ぐことのできる滞納が見つかる可能性があります。
その一部でも実際の収納につなげることができれば、上尾市の自主財源の確保につながります。
市税は、市が地域の課題に応じて活用できる重要な財源です。
例えば、子育て、教育、防災、道路、公園、高齢者支援など、さまざまな市民サービスを支えています。
仮に約4,000万円の収入未済額のうち一部でも収納につながれば、
新たな事業の実施や、既存事業を拡充するための財源にもなり得ます。
つまり、滞納分析を緻密化することは、単に「税金を取り立てる」という話ではありません。
税負担の公平性を高めると同時に、市民サービスを維持・拡充するための自主財源を確保する取り組みでもあります。
「取り立てを強化する」だけではない収納対策を
税負担の公平性を守るためには、納めるべき税金を確実に納めていただくことが必要です。
これは外国人市民でも日本人市民でも変わりません。
一方で、上尾市はすでに県内トップクラスの市税収納率を維持しています。
だからこそ次に必要なのは、一律に督促を強化することだけではありません。
残されている滞納の原因を分析し、効果の高い対策へ行政資源を集中すること
が重要です。
具体的には、
・SMSを活用した納付案内
・多言語による納税案内
・やさしい日本語による制度説明
・転職、退職時の納税周知
・外国人を雇用する事業者への制度周知
・特別徴収の適正化
・滞納理由別、徴収方法別のデータ分析
・納税相談への早期誘導
などが考えられます。
こうした取り組みは、外国人市民だけを対象としたものではありません。
普通徴収となっている日本人市民への収納対策にも応用できるものです。
国民健康保険税にも同じ視点を
今回の問題は、個人市民税だけにとどまりません。
国民健康保険特別会計の決算審査でも、外国人市民の国民健康保険税滞納について、同様に属性や原因を分析する必要性を確認しました。
市からは、一般の市税も国民健康保険税も納税課が担当していることから、外国人市民への周知も含め、一体的にきめ細かなアプローチを進めたいとの答弁がありました。
市民税、国民健康保険税と個別に見るだけではなく、収納行政全体としてデータを分析する視点も必要です。
決算審査から行政経営の改善へ
今回の一連の質疑を通じ、
普通徴収の滞納分析を進め、SMS、多言語対応、特別徴収の適正化などによって収納率向上を図るという方向性が、決算特別委員会の提言にもつながりました。
決算審査というと、
「前年度にいくら使ったのかを確認する場」
というイメージがあるかもしれません。
しかし、本来の決算審査はそれだけではありません。
決算の数字を確認し、
「なぜ、この数字になったのか」
まで掘り下げ、
翌年度以降の政策や行政運営の改善につなげること
に大きな意味があります。
今回の市税滞納に関する質疑は、まさにその一例だと考えています。
小池ゆうやの視点 ~「誰が滞納したか」より、「なぜ滞納したか」~
今回の審査を通じて私が最も重要だと感じたのは、 滞納者の属性分析をより緻密にすること です。
「外国人市民が何人滞納しているのか」という数字だけを取り出しても、本当の課題は見えてきません。
国籍だけでなく、徴収方法、就労状況、言語、制度理解、経済状況、滞納期間などを組み合わせて分析することで初めて、効果的な対策につながります。
上尾市は、市税収納率という点ではすでに非常に高い水準にあります。
その高い水準をさらに改善していくには、
一律の収納対策から、データに基づく「原因別・属性別」の収納対策へ進化させること
が必要です。
また、約4,000万円規模の収入未済額について、その一部でも適正な収納につなげることができれば、市の自主財源が増え、他の市民サービスや事業を充実させる余地も生まれます。
税金を納めることは、市民生活や行政サービスを支える基本です。
同時に、
「制度を知らなかった」
「納付方法が分からなかった」
という理由で意図せず滞納する人を減らすことも、行政に求められる取り組みです。
公平に負担していただくためにも、まず正確に実態を把握する。
そして、把握したデータを次の政策につなげる。
今回の決算審査で見えてきた課題が、今後どのような具体的な収納対策へつながっていくのか、引き続き確認していきます。




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